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「法定後見制度」とはどんな制度か?

前回から成年後見制度についてお話しています。

今日は前回の続きでいわゆる「法定後見」の制度についてお話していきます。

前回同様あくまで基本的なお話ですので、主に制度をよくご存知でない方が参考にしていただければと思います。

 

法定後見制度の基本

法定後見はすごくわかりやすくいえば判断能力が低下してしまったあとに本人や配偶者、親族などが家庭裁判所に申し立てを行い後見開始の審判によって後見がスタートします。

なお本人の申立は実際にはかなり厳しいのではと思いますが、条文上は申立人に含まれています。

 

前回も触れましたがこの「法定後見制度」には3つの類型があります。

「後見」「保佐」「補助」という3つです。

いずれも本人の判断能力が「後見」は恒常的に不十分な状態、「保佐」は著しく不十分な状態、「補助」は不十分な状態においてそれぞれ申立てができることになっています。

このケースに該当する本人を支える「後見人」「保佐人」「補助人」の権限については

「後見人」に「代理権」「取消権」「財産管理権」

「保佐人」に「民法13条1項の行為について同意権と取消権」

「補助人」に「特定の行為について同意権と取消権」

となっていて「保佐人」と「補助人」については必要に応じて特定の法律行為について代理権もあるということもあります。

また逆にできないこととしては日用品の購入や例えば食事、排泄、入浴等の介助などの事実行為、一身専属権、医療行為の代諾することなどがあります。

 

さて前回お話したように裁判所のホームページで公表されている「成年後見関係事件の概況」平成30年版によれば成年後見制度申立事件の総数平成30年36,549件のうち約76.6%にあたる27,989件が法定後見制度の「後見」申立事件となっています。

したがってここからは特に「後見」を中心にお話していきます。

 

申立は本人、つまり被後見人となる方の住所を管轄する家庭裁判所に行います。

なお申立ての代理については弁護士の方や司法書士の方にご相談いただくことになります。

申立時には後見人の候補者を決める必要があります。

ここで申立人が親族であればその親族を候補者とすることもできます。

ただし、親族を後見人候補者としても、必ず後見人に選任されるわけではありません。

裁判所はここで申立内容の調査を行います。

後見人候補者から被後見人になる方の財産管理や身上監護についての考え方を聴いたり、他の親族の意向なども書面で確認されたりします。

被後見人になる方が、どのような財産や負債を所有しているかなども考慮されます。

これらの調査内容を審理した裁判所が「第三者を後見人に選ぶほうがよい」と判断する場合もあります。

そのときは専門家の職業後見人が選任されるケースがでてきます。

また申立て時にはお医者様の診断書が必要になりますので、普段お付き合いのあるお医者様などにお願いできるかどうかも確認するようにしましょう。

さらに原則として医学的にみた本人の判断能力についていわゆる「鑑定」が行われます。

ただ診断書の内容等によっては「鑑定」の省略ができることもあります。

注意点として一度申立てを行うとこの取り下げにも家庭裁判所の許可が必要になりますのでご注意ください。

 

「後見制度支援信託」という制度 

さてこの法定後見に関連して「後見制度支援信託」という制度があります。

「後見制度支援信託」はごく簡単に言えば日常生活に必要な金銭を後見人が管理し、それ以外の金銭については信託銀行に信託するという制度です。

「保佐」や「補助」そして「任意後見」では利用できない制度であることにもご注意ください。

信託銀行に預けた財産は元本が保証され預金保険制度の対象になっています。

なお預けることのできる資産は金銭に限られます。

有価証券などもそのままでは預けることができません。

 

この制度が生まれた背景として当時問題視されていたのが相次ぐ後見人の横領でした。

そこで対策として裁判所が信託協会と一緒に2011年2月に制度導入を発表しました。

ただ当初は専門職後見人の関連団体から厳しい意見があがりました。

その理由として挙げられていたのがこのコラムでの成年後見のお話しの最初でお話しした「ノーマライゼーション」「自己決定の尊重」さらには本人の身上面に関する利益の代弁という意味をもつ「アドヴォカシー」と言う考え方はどこにいったのか?という指摘でした。

とはいえやはり後見人の横領という問題は看過できないということもあり、関連団体との協議の上2012年2月よりスタートすることになりました。

 

裁判所ホームページ内の「後見制度支援信託の利用状況等について-平成29年1月~12月-」によれば平成29年1年間の利用人数は成年後見及び未成年後見をあわせて4,533人、金額は約1460億円となっています。

また制度導入時からの累計利用人数は21,504人、累計金額が約6,988億円となっています。

 

「後見制度支援信託利用」の手続き等

東京家庭裁判所管内では現在金銭のみで500万円程度の所有者を主な対象としてこの制度の導入をすすめているようです。

この制度を導入するケースにおいてはまず専門職後見人が財産の調査などを行い制度の利用が必要であると判断すれば金融機関等と口座開設などの手配を行います。

このため手続きの手配を行った専門職後見人に報酬が支払われることになります。

その契約後専門職後見人は離職し親族後見人に引き継がれることになるのが基本形です。

その後は信託銀行からは信託財産状況報告書が定期的に送られてきます。

また信託契約後の後見事務としては普通考えにくいのですが定期交付金の変更や相続の発生や保険金の収入などによる追加信託などを行うことになります。

また逆に自宅介護における小規模なリフォームなどなどの際には一部を引き出したり大規模リフォームなどを行うことになれば解約したりということも起こりうるわけです。 

こういった事情が発生した場合、後見人は家庭裁判所に何にいくら使うのかを報告します。報告を受けた裁判所が内容について問題ないと判断すれば「指示書」という書類が出てきます。

これを被後見人の財産を預けている信託銀行に持参して必要な手続きを行うことになるわけです。

このように被後見人の言ってみれば普段使用しない金銭について日常費とは別に管理していく制度がこの「後見制度支援信託」ということになります。

 

色々な意見のある後見制度ではあるが・・・

後見制度に関する報酬については以前に成年後見制度の報酬の基本というお話をこのブログ内でしていますのでリンク先をあわせてご覧ください。

そしてこの報酬についてもさまざまな意見があります。

また毎年のように専門職後見人による横領事件が報道されるなど制度自体にも問題がないとはいえません。

 

さらに後見制度そのものについても使い勝手の面などからも時折厳しい意見を聞くことがあります。

私自身も成年後見制度について疑問点がないわけではありません。

とはいえ昔あったいわゆる「禁治産」「準禁治産」といった制度に比べれば一般的には普及されるようになりました。

完璧な制度ではないかもしれませんが、それでもさまざまな死後事務や相続関連も含めた制度の一つとしてよく理解したうえで利用を検討されるようにしてください。

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