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自分の死後の手続き等をお願いする「死後事務委任契約」とはどんな契約か?

前回、遺言書とお墓、葬儀の関係性についてお話ししました。

で、私のような独身者や配偶者の方を亡くされた方で後を託す方が見当たらないという場合、お墓や葬儀のことはどういう方法があるのか、ということを考えるケースもあるでしょう。

今日はその方法の一つであり、このブログでも時折取り上げている「死後事務委任契約」についてあらためてお話しすることにします。

 

「死後事務委任契約」とは何なのか?

そもそも「死後事務委任」というものはどんなものなのでしょうか?

自らが亡くなった後には実は様々な手続きが残っています。

例えば死亡届を提出することもその一つでしょうし、前回お話しした葬儀や納骨の手続き、遺品の整理などといったものもあげられます。

これら主な死後の手続きを信頼できる第三者に生前に委任することが「死後事務委任」であり、その契約が「死後事務委任契約」ということになります。

 

さてこういったことは遺言書に書いておけばいいのではないか?という方もいらっしゃるかと思います。

ただこれら死後事務にあたることは基本的に遺言のいわゆる「法定遺言事項」ではありません。

遺言書に書いておくことそのものは問題ありませんが、あくまでお願いであるだけで拘束力がないいわゆる「付言事項」ということになります。

(この辺りのお話しは前回お話ししていますので、こちらからあわせてお読みください。)

これに対してこの「死後事務委任契約」ですから事後事務の委任を受けてこれを引き受けた方は基本的にそのお手続きをしなければいけないことになります。

ここに遺言書と死後事務委任契約の違いがあります。

 

「預託金」に関するトラブルに注意

さてこの死後事務には一定の経費等がかかってきます。

葬儀代や納骨費用、遺品整理費用などが考えられます。

そのため一般的にこの契約において、委任者は受任者に一定の金銭いわゆる「預託金」を預ける形になってきます。

この「預託金」についてトラブルが発生する可能性があるので注意する必要があります。

まず死後事務を相続人以外の第三者に依頼する場合、これらに関するお金を事前に当該第三者へ預けておく必要が出てきますが、この「預託金」を事前に受任者にきちんとあずけないと死後事務が行われない可能性がでてきます。

これが一つ目の注意点です。

というのも委任者のお金は委任者の死後、相続財産となりますから相続人のものであり死後事務を受任した方でも受け取ることが難しくなるからです。

なお相続人がいない場合でも相続財産にはなります。

この場合はその相続財産については相続財産管理人が家庭裁判所によって選任されその管理のもとに入ることになります。

 

さて委任者は生前に預託金を第三者に預けるわけですが、もし預けられた第三者がそのお金を不正に流用したりすると大きな痛手を伴うことになります。

これがもう一つ特に大きな注意点です。

以前に高齢者の身元保証や生活支援、そして事後事務などを請け負っていた団体が預託金を流用し破産した事例もあります。

預託金の預け先すなわち死後事務をお願いする相手についてはその信頼度を十分に確認することが大切です。

とはいえそこをしっかり見抜くことがまた難しいところでもあるのですが・・・。

とはいえ自身の死後事務を個人の方にお願いするのであればその人柄や活動状況を、法人であれば取り扱い実績や評判などをよくよく調べた上で、疑問点をしっかり直接聞くことは最低限この契約を結ぶためには必要なことです。

 

以前にあった「死後事務委任契約」をめぐる裁判

ところで民法に詳しい方は「委任者が亡くなれば委任は終了するのではないか?」というふうに思われるかもしれません。

これについては以前にこの事後事務の受任者と相続人との間で裁判になった事例があります。

入院中の方(仮にAさんとします)がお友達(仮にYさんとします)に通帳や印鑑、現金などを渡してAさんの死後葬儀や法要の施行、その費用の支払い、病院への支払い、Aさんがお世話になった家政婦さんへの支払い、そしてYさんへの支払いを依頼しました。

Yさんは依頼に応じてそれらを行ったところAさんの相続人から通帳や印鑑、現金等の返還を求めて訴えられたという事例です。

先程の「委任者が亡くなれば委任は終了するのではないか?」という点がこの事例の一つのポイントでした。

本件を扱った最高裁の平成4年9月22日の判例では

「自己の死後の事務を含めた法律行為等の委任契約がAとYとの間に成立したとの原審の認定は、当然に、委任者Aの死亡によっても右契約を終了させない旨の合意を包含する趣旨のものというべく、民法653条の法意がかかる合意の効力を否定するものでないことは疑いを容れないところである。」

(有斐閣 「民法判例百選II債権第5版新法対応補正版〔No.176〕」P146より引用)

としています。

つまり委任の終了事由を定めた民法653条の規定(終了事由に委任者や受任者の死亡があります)は強行規定ではないので特約があってもかまわないというお話しになります。

ただし相続人に遺留分がある場合で、受任者に預けた「預託金」があまりに高額な場合は遺留分の減殺請求を受ける可能性もあるとの見解もあります。

したがってもし委任者に相続人がいる場合はできれば相続人にも一度しっかりと自分自身の考えをお話ししておくことが大切になります。

またあまりに高額な預託金を預けるような死後事務委任契約は避けた方がいいでしょう。

ちなみに実際の死後事務委任契約は公正証書で作成することが基本ですが、委任者が死亡してもなお契約が終了しない旨の条項を設けることになります。

とはいえ死後事務委任契約は先程の触れた高額な預託金を預けないためにも委任したい事項をなるべく絞った契約にするといったようなことも検討していくようにしましょう。

 

死後事務委任契約だけでなく他の契約の併用も考えましょう

また死後事務委任契約においては死後事務を託された人を監督する人がいません。

したがって死後事務を託された人がもし預託金を流用してしまったとしても気づかれない可能性があります。

本人に判断能力がある場合は定期的に預託金の状況の報告義務を課せばいいのですが、仮に認知症等で本人の判断能力が厳しい状況になると報告されても理解できない可能性があります。

こういったことを防ぐためには任意後見契約を別途締結し、死後事務を託した人を任意後見人とすることを検討するといいでしょう。

なぜならば任意後見契約は任意後見監督人がつかないと後見が開始しないからです。

ただ相続人はおろか信頼できる人があまりいない場合に死後事務を託した人が任意後見の契約だけをしておいて実際に本人の判断能力が低下しても任意後見開始に必要な申し立てをしない可能性も残されています。

ここまでくるととにかくどれだけ信頼できる人間関係があるかというお話しにはなってくるところが悲しい部分ではあります。

 

この死後事務については最近取り上げられる機会の多い民事信託を利用する方法もあります。

死後事務を託した人を受託者とする信託契約を締結し、死後事務に必要な資金を信託財産とすることで委任者の財産から切り離すことができるようになります。

死後事務を託された人、すなわち受託者は預かった信託財産をもって委任者の方が亡くなったあとに受益者に資金を給付する形が基本になります。

ただしその際には信託契約の内容及び信託の特性などをしっかりと理解することが大切になります。

また受託者を誰にするのか、そして受益者を誰にするのかなどもあわせて検討すべき大事なことになります。

いずれにしても契約の形や内容をしっかり理解することは信託を利用する場合とても大切だと考えます。

 

当事務所でもこの死後事務委任契約のご相談をお受けすることがありますが、この心配点もある旨は必ずお話ししています。

その上で私も含め誰を受任者としてお願いするのか、どんなことを頼むのか、預託金をいくらに設定するのかなど長所短所も含め真摯にご相談をお受けしています。

特に死後の事務を託すことのできる相続人などのいない方はこの契約の利用を検討することも一つの考え方ですので、ご心配などある方は当事務所ホームページのこちらのページを参考にしていただき一度ぜひお問い合わせください。

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