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改正相続法についてなるべくわかりやすく話してみる。その6「特別の寄与」

改正相続法についてのお話しを続けています。

初回は「20年以上婚姻した夫婦間の居住用不動産の贈与」についてのお話しをしました。

2回目はいわゆる「預貯金の仮払い制度」を取り上げました。

3回目は「相続開始後の共同相続人による財産処分」という点にお話しして、4回目は「遺留分制度の見直し」について取り上げました。

前回5回目は「相続の効力等に関する見直し」というテーマについてお話しました。

また「自筆証書遺言の様式緩和」についてはこちらの投稿でお話ししています。

今日は6回目で、何かと取り上げられる機会の改正内容でもあるいわゆる「特別の寄与」についてお話します。

改正民法の第1050条になります。

 

「特別の寄与」とはどんなものか?

まずはこのブログにしては珍しく条文をそのまま示してみます。

第1050条 

 第1項 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によっての相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

もう一つ例によって法務省HPから要点を引用します。

(要点)

  相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に対して金銭請求をすることができるようにする。

(法務省HP内「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」ページより引用)

今回の「要点」は今までの「要点」に比べてわかりやすいように思います。

相続人以外の親族の方は今まで亡くなった方のためにがんばっても遺贈等がなされない限り金銭的には報われないケースが多かったと思います。

今回の改正では「無償で被相続人の療養看護等を行った」「相続人以外の被相続人の親族」がなんとか金銭的にも報われるような形を作ったということになるでしょうか。

 

例をあげてみると、夫をお姑さんより先に亡くした妻が、夫の死後も無償でお姑さんを献身的に看護しやがてお姑さんも亡くなったとします。

この時この妻は親族でありますが(一親等の姻族ということになります)お姑さんの相続人になることはできません。

夫に兄弟姉妹つまりお姑さんの子がいれば相続人は夫の兄弟姉妹になるわけです。

今回の改正のポイントは例えばこのケースにおいては夫の妻は夫の兄弟姉妹に対してお姑さんの看護をしたいわば貢献の度合いに応じた金額を請求できる、という点にあります。

この改正はお話しした例のように、「嫁」といわれる方々を念頭に置かれているであろうことはいろいろな媒体でも取り上げられているところです。

先日もあるテレビ番組でミニドラマ風に説明されていたのを見かけました。

 

ただ条文を見てもわかるように「相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によっての相続権を失った者を除く。」とありますから何もお嫁さんだけが対象とは限らないのではないかと思ったりします。

例えば被相続人に子どもがいるけど遠方で生活していて、被相続人の兄弟姉妹が療養看護をしているというようなことはありえますよね。

このケースでは被相続人の兄弟姉妹は相続人ではないですけど親族ですから請求者にもなりえるのではないかと考えたりもするわけです。

 

「無償で」ということ

もう一つ注意したいところが「無償で」という点です。

先ほどの「要点」にあるような状況下ですと生計が混在してしまっているようなケースもありうるかと思います。

このようなケースで「無償で」という点がどこまで「無償」なのかはなかなか難しいお話ですよね。

条文でいうところの「特別寄与者」が何らかの恩恵を受けていたりすれば、相続人側からすれば請求を認めたくないと考えるケースはありえるでしょう。

しっかり生計を別にしておくべきところではありますが、これが現実的にどこまでしっかり分けることができるのかは考えてしまうところでもあります。

 

ところでこの請求、基本は協議によるわけですが、協議がつかなければ家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。

この場合は「特別寄与者」が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月、相続開始時から1年という期間制限がありますので、早めに弁護士の方にご相談をいただくことになるでしょう。

 

新たないわゆる「争族」を生まないために

この「特別の寄与」という制度によって、確かに今までがんばってきた方に報いる方法ができたとは思います。

ただ一方で新しいいわゆる「争族」の種にならなければいいな、という心配も浮かんできます。

各種媒体などでは「特別の寄与」を請求するため「介護記録や介護日誌をつけておく」「介護事業者とのメールやり取りを残しておく」といったようなことを書いているものも見受けられます。

ただそれもルールで明確に決められているわけではない以上、どこまで揃っていれば請求できるのか、ということもあると思います。

協議がまとまらなければ新たに紛争に入ってしまう可能性もあることは頭にいれておいていただく必要があるでしょう。

 

またこういう制度ができたということを、実は今日のお話しの例でいえば、お姑さんの側もしっかりと理解していただきたいところです。

「もしかしたら自分の死後子どもと嫁で争いの可能性があるかも・・・」

と考えれば遺言書でお嫁さんにも財産の一部を遺贈するよう準備しておくことも心遣いの一つだと思うのです。

財産の話がすべてではないですが、それでも感謝の気持ちとして遺贈することはあっていいのではないでしょうか。

これも一つのいわゆる「争族予防」ともいえると思います。

「特別の寄与」を請求することなく相続の決着がつくことが一番かもしれませんので。

 

さて今日まで6回改正相続法のお話しをしてきました。

この6回のお話しは本年2019年7月1日よりスタートすることになります。

相続に関してこの新しいお話しをざっとでも気にかけていただければ幸いです。

そして実は来年スタートする改正相続法のお話しが2つ残っています。

それは「配偶者居住権」と「自筆証書遺言保管制度」です。

これについてスタート時期の関係からもう少しお時間を頂戴して後日あらためてお話しすることにし、改正相続法のお話しはここで一旦締めさせていただくことにします。

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