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改正相続法についてなるべくわかりやすく話してみる。その4「遺留分の見直し」

さて前々回は「遺留分」について、前回は「遺留分侵害額請求権」についてお話ししました。

今回は前々回、前回を踏まえたうえで改正相続法についてのお話しに戻って4回目として「遺留分制度の見直し」について取り上げることします。

改正後の条文では1042条から1049条にかけての部分になります。

ちなみに初回は「20年以上婚姻した夫婦間の居住用不動産の贈与」についてのお話しをしました。

また2回目はいわゆる「預貯金の仮払い制度」を取り上げました。

前回は「相続開始後の共同相続人による財産処分」というテーマについてお話ししました。

また「自筆証書遺言の様式緩和」についてはこちらの投稿でお話ししています。

 

遺留分請求の「金銭債権化」

では改正法によってこの「遺留分」についてどのような見直しが行われたのでしょうか?

まずはいつものように法務省HPに記載されている「要点」を引用します。

(要点)

 ⑴ 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする。

 ⑵ 遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができる。

(法務省HP内「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」ページより引用)

この法務省HPの「要点」はまとめてくれているありがたさがある反面、やはり専門用語が並ぶせいかわかりにくいという部分は否めないかなと感じます。

で、ポイントは(1)の部分です。

今までの「遺留分減殺請求権」という仕組みですが、実は遺留分減殺請求が行われると例えば不動産なども多少乱暴な言い方をすれば自動的に共有になってしまうような問題点があったんです。

例えば親が亡くなり兄弟二人が相続人で、兄がある不動産を相続し、相続財産がその不動産しかないとします。

この時に弟が遺留分減殺請求を行うと、その不動産は共有になってしまう、というのが今までの原則的な考え方だったわけです。

でも実際問題こんな形で不動産を共有状況にすることを望んでいる方は少ないと思うんですよね。

 

そこで今回の改正ではこの遺留分減殺請求権を金銭債権化することにしたのです。

平たく言ってしまえば遺留分減殺請求が行われた場合の解決についてお金で決着をつける、ということを原則化した、ということです。

ここにいたってすでにお話ししたように今まで「遺留分減殺請求権」といっていた呼び名も「遺留分侵害額請求権」となることとなりました。

また先程の「要点」の(2)は請求を受けた場合相続人がすぐにこのお金を支払えない場合について裁判所に期限をつけてもらうように求めることができるという話になります。

 

遺留分侵害額請求への備えとして

ところで、今回のお話しですが、私の周囲でも

「あれ、今までもお金で解決してなかったっけ?」

という発言が出てきています。

 

例えばFPとして考えた際には、従来から例えば「遺産分割」に関する対策として遺留分を請求された場合にそなえて保険を活用することがあげられています。

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、これは民法と税法に関する相続の考え方の違いを利用したものです。

先程の兄弟の例でいえば兄が不動産を相続したことに対し弟が遺留分を請求してきた場合に備え親が自分を保険契約者兼被保険者、兄が保険金受取人とする契約を結んでおきます。

実際に相続が発生すると兄は不動産を相続し保険金を受け取ることができます。

で、この保険金を弟に遺留分として渡すという仕組みです。

(ちなみに遺留分を請求されるまで待つのではなく、例えば相続分相当額を準備しておき遺産分割協議において代償分割金として渡すこともありますが、話がずれますので今日は触れる程度にしておきます。)

この保険金ですが、民法的には原則「受取人固有の権利」として相続財産に含まれないことになっています。

一方で相続税法の考え方では「500万円×相続人数」を保険金から差し引いた金額が相続税の課税対象となる相続財産になります。

この考え方を使って遺留分を請求された場合の対策にしておくわけです。

 

つまり今回の改正というのはどちらかといえば実務的に現場で行われている方法の一つに近づいたのではないかという言い方もできるのではないか考えています。

現物で分ける原則からお金で解決する原則に変えたということをご理解いただければと思います。

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