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改正相続法についてなるべくわかりやすく話してみる。その1「夫婦間の居住用不動産の贈与」

久しぶりの更新になりました。

先週は二つのFPの勉強会にてタイトルは違いますがほぼ同じ内容のお話をさせていただきました。

テーマは「改正相続法」についてです。

他の専門家の方もいらっしゃる中、大変僭越で恐縮でしたが無事役目を果たすことができほっとしております。

 

さてそういった事情の中、せっかくですのでこちらのブログでも「改正相続法のポイント」をテーマに何回かお話をさせていただくことにします。

ただこのブログですので、法律的なお話よりも実際の生活で考えられるようなことに、なるべく重きをおいてお話したいと考えています。

ちなみにおおむね今年の7月から実施されていくものが多いのですが、来年に実施されるものもあります。

また自筆証書遺言の様式緩和という、財産の目録については自筆でなくてもよくなった旨の改正はすでに今年(2019年)の1月から実施されています。

こちらはすでに当ブログでも下記リンク先にてお話させていただいておりますので併せてお読みいただけますと幸いです。

2019年(平成31年)1月から自筆証書遺言は何が変わるのか?

では今日は1回目、夫婦間の居住用不動産の贈与に関するお話です。

 

「持ち戻し免除の意思表示の推定」って何だろう?

最初のお話は、長いこと結婚していたご夫婦の間で住んでいる家をその配偶者に贈与した場合の取扱についてのお話です。

条文としては新たに民法第903条第4項として新設されました。

まずどんなお話しか法務省のHPに記載されている「要点」を引用します。

 

(要点)

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が,他方配偶者に対し,その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については,民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し,遺産分割においては,原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とする(当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算をすることができる。)。

(法務省HP内「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」ページより引用)

 

要点でもなかなか難しい表現が見られますね。

ポイントになってくるのは「持戻しの免除の意思表示」というところです。

あまりご存じない方は多いかもしれませんが、この考え方自体は今までもあった規定です。

どういうことかというと・・・。

 

例えば夫が妻に居住用不動産を贈与したとします。

その後夫が亡くなり相続が発生しました。

このとき今までの民法の考え方では、原則として相続財産を分ける計算をするときに、贈与した居住用不動産も相続が発生したときの価格で遺産に足し戻して取り分を計算することになっていたんです。

法務省が先ほど引用したHPに公開しているPDF資料では「遺産の先渡しを受けたものと取り扱われる」という考え方だったわけです。

 

ただもし夫から妻への居住用不動産を贈与する際に「遺産の先渡しにしなくていいよ」「相続のときにもどして計算しなくてもいいよ」という意思表示を夫がすれば先ほどお話した計算はしなくてもいい、ということに今まではなっていました。

この「戻して計算しなくていい」という意思表示が「持戻し免除」の意思表示といわれているものです。

でもこういう意思表示が必要ってお話、一般の人はご存じない方もたくさんいらっしゃったと思います。

 

そしてこのことは民法の相続の取り分を考えるときには大きな影響が出てきます。

先ほどの例で言えば夫が「贈与したおうちは遺産とは別に考えていいよ」という意思表示をしなければ、今までは夫の死亡による相続の際に贈与したおうちと遺産を一緒にして民法上の取り分を計算する必要があったわけです。

そうすると相続財産のうち仮におうちが2000万円で現金も2000万円、相続人が妻と子の2人の場合、法定相続分は2分の1ずつなので、このままの割合で分けることになると妻は2000万円のおうちを「遺産の先渡し」として先にもらってしまったことになり、現金はすべて子のところにいってしまうことになってしまいます。

これを妻の状況を式にすると・・・

(おうち2000万円+現金2000万円)×2分の1-おうち贈与分2000万円=取り分0円

となります。

妻からすると実際の相続の際にはお金がもらえず老後の生活が心配になるかもしれません。

 

そこで今回の改正ではわざわざ意思表示をしなくても「持戻し免除」の意思表示があったことにしよう、ということで今までと考え方を逆にすることになったんです。

つまり先程の例で夫から妻におうちを贈与することは夫が特に何もいわなければ夫の相続が発生した際におうちを遺産に加えて考える必要がなくなったというお話しなんです。

したがって先ほどの例では遺産が現金2000万円だけになってこれを妻子で1000万円ずつ分けることが可能になるわけです。

再度妻の取り分を式にすると・・・

現金2000万円×2分の1=現金1000万円

となり妻の手元にも法定相続分で考えれば現金が残ることになるわけです。

またすでに贈与を受けた居住用不動産もそのまま妻のものとなります。

なおこのルールの対象になるのは婚姻期間が20年以上のご夫婦であることには注意が必要です。

 

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」という特例

ところで税法の話として「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」と呼ばれる特例があります。

こちらも婚姻期間が20年以上のご夫婦が利用できる特例で、居住用不動産2000万円まで贈与税の課税価格から控除される、わかりやすく言えば課税対象にならないで贈与できるという制度があります。

詳しくは国税庁の下記ページをご覧ください。

国税庁HPタックスアンサー「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」

私の先輩が以前「10年目のダイヤモンド、20年目の不動産」とよく冗談を言っておりましたがそれはさておき、この制度は以前から夫死亡時の相続財産を減らすことにつながるため相続税の節税対策としてよく知られていたところです。

ただ今まではこの制度を利用しても「相続税の節税対策」にはなるのですが、先ほどお話したような「持戻し免除の意思表示」が別途なされない場合に「遺産分割対策」にはならない形になっていました。

が、今後は原則として「持戻し免除の意思表示」がされていると推定されることになるのでわざわざ意思表示をしなくても「遺産分割対策」として利用できることになりますね。

 

ただ注意点として万一妻が夫より先立ってしまった場合は贈与したことによる対策の効果が得られなくなってしまうことがあり、これは今回の改正によっても変わるものではありません。

不幸にもこういう事例がないわけではないので本当にそこまでする必要があるのかしっかり検討して利用いただくことも大切になります。

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