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改正相続法についてなるべくわかりやすく話してみる。その2「預貯金の仮払い制度」

前回に続いて改正相続法についてお話しをしていきます。

前回は20年以上婚姻した夫婦間の居住用不動産の贈与についてのお話しでした。

また自筆証書遺言の様式緩和についてはこちらの投稿でお話ししています。

今日はいわゆる「預貯金の仮払い制度」についてお話しします。

 

「預貯金の仮払い制度」はなぜできたのか?

この制度の前提としてお話ししておくことがあります。

それは平成28年12月19日の最高裁判所大法廷における判例変更です。

実はこのブログですでにこのお話しをしています。

預金と遺産分割

預金と遺産分割 その後

法定相続分の預金払い出しが認められなくなって注意しておきたいこと

特にこのうち上記判例については2番目の「預金と遺産分割 その後」でがんばって詳しく話すことにトライしておりますので、あわせてご覧ください。

で、ここでも一応ごく簡単に先程の最高裁大法廷の判例変更になった決定について触れておきます。

ポイントは2つです。

なるべきわかりやすくお話ししますと・・・

・被相続人の預貯金は遺産分割の対象になった

・よって共同相続人の一人が単独で払い戻すことができない

という2点です。

 

ただ先程のご案内した以前の当ブログでもお話ししているのですが、実際には今でも遺産分割協議書等が預金の相続手続きには必要になっています。

したがって実務的にはあまり変わらない話ではあります。

しかしこの決定によって、被相続人の預貯金の引き出しには「より厳格に」遺産分割協議等が必要となったといえます。

したがって当面の生活費や葬儀費用などの充当が難しい人が出てくるのではないかという問題がでてきたことになります。

そこでこの資金需要に備える意味で元々あった制度の改正と新しい仕組みが出てきました。

 

預貯金債権の仮払い制度とは?

元々あった制度の改正とは「家庭裁判所の仮分割の仮処分」という制度についてその要件を緩和したという話です。

ただしこの制度については元々存在した制度であっただけでなく、遺産分割の調停の本案などが家庭裁判所に係属している、つまり裁判になっていることが条件になります。

したがってこちらについては私のほうでお話しするよりも弁護士の方にご相談等されるケースが通常になると思いますのでこのブログでは省略します。

 

そこでこのブログでお話しするのは新たに民法909条の2に設けられた遺産分割前における預貯金債権の行使という仕組みです。

これが「預貯金の仮払い制度」といわれるものです。

「預貯金の仮払い制度」は家庭裁判所の判断なしで共同相続人の一人が被相続人の預貯金の一部を金融機関の窓口にて払い戻しを受けるようにする制度です。

この「被相続人の預貯金の一部」ですが金額に条件があります。

次の2点です。

相続開始時の預貯金額×3分の1×払い戻しを受ける共同相続人の法定相続分

上限として1金融機関当たり150万円

 (上限150万円については「平成30年11月21日法務省令第29号」)

この条件であれば家庭裁判所の判断なしで金融機関の窓口にて共同相続人の一人が引き出しを受けることができるというわけです。

 

とはいえ気になる点もあります。

それは金融機関の窓口にどんな書類を持っていけばいいのか?ということです。

というのも先程の条件の中には「法定相続分」というものがあります。

「法定相続分」があるからにはその「法定相続分」を金融機関にわかるような書類を持っていく必要があるのではないか?というのが気になる点なのです。

したがってもしこの制度を利用して払い戻しを受けようと考えた場合は相続関係のわかる戸籍謄本類や法務局に申請して発行してもらう法定相続情報などを準備する必要があるかもしれないと思ったわけです。

このあたり今年の7月以降このルールが施行された後でどういった書類を金融機関側のほうで必要とするのかはしっかり確認する必要があると考えています。

 

この制度以外に当面の生活費や葬式費用を準備する方法

ところで先程の「1金融機関当たり150万円」の上限ですが、これについて条文では次のように書かれています。

標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。

(改正民法909条の2括弧書き)

最初の段落でも当分の生活費や葬式費用ということに触れましたが、条文上からも記載が明らかですし、先程の法務省令がこの条文中の「法務省令」となって150万円ということになりました。

逆に言えばこの仮払い制度以外の方法でもこれらの費用を準備することもできるでしょう。

ちょっとFPの視点が入りますがいくつか考えられる方法をあげてみましょう。

・生前贈与

・保険の活用

・信託銀行の金銭信託

などでしょうか。

まず生前贈与です。

贈与額が110万円を超えると贈与税の基礎控除額を超えることになりますが、それでも共同相続人の一人に当面の生活費の不安がある、例えば夫の口座で生活費を賄っている妻に対して生前贈与しておく方法もあるのではないでしょうか。

また葬式費用については保険を活用して充当する事例もあります。

葬儀費用についてはいろいろな統計がありますが、これは葬儀の規模などによって変わってくることがごく普通の事かと思います。

ちなみに以前に次の投稿を当ブログでしていますのでよろしければ一緒にご覧ください。

一般的な葬儀の費用はどのくらいかかるのか?

また最近では信託銀行などが金銭を預ける人を委託者、銀行を受託者とし、委託者が亡くなって相続が発生した際にそなえ推定相続人の一人を受取人に指定しておく商品もあります。

こう見てみると事前に備えておくことのできる制度もいろいろあります。

仮払い制度も選択肢の一つではありますが、こういった準備の仕方もあることを知っておいていただき、各ご家庭にとってより良い選択ができるように検討していただければ幸いです。

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