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意味の違う「遺言信託」

「独身」と「離婚後」のライフプランの重要性というエントリーで触れた私が所属する勉強会で講師役でお話した内容から、まだここでお話していないものについて何回かお話していくことにします。

今日はいわゆる「遺言信託」という言葉についてです。

 

信託銀行のいわゆる「遺言信託」

最近は「信託」という言葉が良く聞かれるようになりました。

特に気にかかっているのがいわゆる「終活」にかかる信託です。

中でも「遺言信託」という言葉は実は二つの意味を持っている状況になっています。

まずは信託銀行で旧来からよく用いられていた「遺言信託」です。

これは「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」(通称「兼営法」と言われることが多いので以下「兼営法」でお話ししていきます。)という法律に規定されている内容にその根拠があります。

ちょっと条文を見て見ましょう。

兼営法第1条の第4号です。

第一条  銀行その他の金融機関(政令で定めるものに限る。以下「金融機関」という。)は、他の法律の規定にかかわらず、内閣総理大臣の認可を受けて、信託業法 (平成十六年法律第百五十四号)第二条第一項 に規定する信託業及び次に掲げる業務(政令で定めるものを除く。以下「信託業務」という。)を営むことができる。

 四 財産に関する遺言の執行

条文においては「信託業務」とされているものの一つである上記第4号の「財産に関する遺言の執行」が信託銀行のいう「遺言信託」です。

多少乱暴な言い方で恐縮ですが、言ってみれば「商品名」と考えていただいてもいいでしょう。

遺言の作成に関与し、遺言書を保管し、相続発生時には遺言執行の業務を行うセットのパッケージだと思っていただけるといいでしょう。

 

また余談ですが先日2017年8月30日の読売新聞朝刊くらし家庭面に

「高齢者の財産 「信託」管理」

という見出しの記事がありました。

ここで紹介されている「信託」というものは「遺言信託」とは違って、判断能力の低下してきた方々の金銭等を預かって、不要な引き出しや詐欺被害を防止するために設けられている商品です。

これらは「遺言信託」というよりも「金銭信託」といわれる商品であることがその本来の姿です。

 

信託銀行の商品に共通して言えることはやはり手数料の存在です。

冒頭の信託銀行の「遺言信託」の場合、一般的に申込み時、つまり遺言書の作成時に手数料が発生します。

またこのときにおそらく相続人を特定するため戸籍謄本等を集めるケースがあるかと思いますが、この実費はもちろん別です。

そもそも公正証書遺言を作る場合でも通常は遺言者の戸籍と相続人の戸籍で相続関係があることの確認ぐらいは必要になりましょうが、遺言者の戸籍をさかのぼるようなケースは少ないと思います。

また最近はかからないケースもあるようですが、毎年遺言書の保管料が発生する内容になっているものもあります。

そして遺言執行の際にも手数料がかかります。

ここが一番高額になるところでしょう。

また遺言執行時に不動産名義書き換えのために司法書士さんに支払う費用や相続税申告のために税理士さんに支払う費用、その他実費に関するものは当然信託銀行の手数料とは別であることも注意が必要です。

 

遺言による信託

これに対して最近よく聞くいわゆる「民事信託」の一つとしての「遺言信託」もあります。

先ほどの信託銀行の「遺言信託」と区別するために「遺言『による』信託」という表現をしている方もいらっしゃるようです。

こちらの方が本来の法律的な意味での「信託」の形かな、とは思います。

これは遺言により信託行為を設定することになります。

この「信託行為を設定する」という表現がなかなかに難しいところです。

というのもこれを理解するにはそもそも「信託って何?」というところからお話しをする必要があるわけで、これをある程度しっかりお話しするにはけっこうな分量になってしまいます。

細かいお話しは別の機会に譲りますが、ここではざっくりと自分の財産を自分の死後、ある目的のために誰かに預かってもらうような仕組みだと思ってください。

遺言で夫が委託者として、自宅の管理等を息子を受託者として担わせ、実際にそこに住み続ける妻が受益者となるような形がごく基本的なものです。

 

このような遺言による「信託」も最近いろいろなところで取り上げられています。

ただ以前にこれを取り扱っている専門家の方に聞いたところ、必ずしも「信託」でなくてもいいケースもある、というご意見もお聞きしています。

確かに「信託」の仕組みは一般の方にはわかりにくい部分もあり、またこの設定時に士業の方々に支払う手数料も発生します。

「信託」も終活のひとつとして有効なものである部分もあるとは思います。

ただ選択肢の一つとして考えることがいいのではないかな?と考えますし、既存の制度でも十分対応できる終活のケースもあります。

なによりも「信託」の言葉がいろいろな意味合いを持ってしまっている側面もありますので、その内容をしっかり確認して自分が本当にその仕組みを利用したいのかなるべく理解することが大切です。

もしご不明な点などあれば、当事務所でもお話をお伺いしますのでお気軽にご相談ください。

 

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