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死別や離婚によって「名字」はどうなるのか?

前回、「「死後離婚」と呼ばれる「姻族関係終了届」とは?」というテーマでお話しをさせていただきました。

今日はその延長線上にあるというわけではないのですが、民法の条文で「氏」といわれる「名字」と離婚の関連性について、なるべくわかりやすくお話しすることにしますね。

というのも、この件についてはよく誤解や勘違いなどありがちなものですので。

ちょっといつもより長めになりますので肩の力を抜いてお付き合いくださいね。

 

「死別」はそのままが原則

そもそも「名字」の取り扱いは「死別」と「離婚」とで原則が違ってきます。

なおここから話をわかりやすくするために、事例においては婚姻によって名字を夫の氏に変えた妻のケースということでお話ししていきます。

前回の「姻族関係終了届」を提出する方も女性が多いという話題を多く見受ける点や、現状いまだ婚姻によって名字を変更する方は男性よりも女性の方が多いであろうと思いますので、この事例でいく旨ご了承ください。

さてではまず、夫が亡くなった場合、つまり「死別」の場合はどうでしょうか?

これは特段何も変化がありません。

つまり「名字」はそのままということになります。

従いまして夫と死別した後に、残った妻が前回お話しした「姻族関係終了届」を出しても、それによって「名字」がいわゆる「旧姓」に変わることはありません。

しかし妻が「旧姓にもどりたい」と希望する場合は、「旧姓」にもどることができます。

条文を確認しましょうね。

民法第751条第1項です。

(生存配偶者の復氏等)
第751条
 第1項 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。

条文上はあくまで「できる」ですので「旧姓」にもどしてももどさなくていいわけです。

というより、もしかしたら「旧姓」にもどすことができるということを知らない、もしくは考えていない方のほうが圧倒的かもしれませんけどね。

で、「旧姓」に戻す場合は役所にいわゆる「復氏届」を提出します。

もうひとつ条文を確認しましょうね。

戸籍法第95条です。

(生存配偶者の復氏届)
第95条
民法第751条第1項 の規定によつて婚姻前の氏に復しようとする者は、その旨を届け出なければならない。

これも「姻族関係終了届」と同じく届出だけです。

期間もいつまでに、ということはないです。

さらに言えばこの場合の「復氏届」と「姻族関係終了届」は連動していません。

ですから「復氏届」だけだして「姻族関係終了届」を出さない、ということも当然ありえるわけです。

なお「復氏届」を出した場合は名字が代わってしまうわけですから、亡き夫と同じ戸籍には残れません。

自分一人であれば両親の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作ることになります。

離婚とお子さんのいるケースについてはのちほどお話ししますね。

 

「離婚」は「旧姓」にもどるのが原則だけど・・・

これに対して「離婚」の場合はどうでしょうか?

「離婚」の場合は「復氏」つまり「旧姓」に戻ることが原則になります。

やはり条文を確認しましょう。

民法第767条第1項です。

(離婚による復氏等)
第767条
 第1項 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

条文は「協議上の離婚」となっていますが、「裁判所上の離婚」についてもこの条文が準用されていますので(第771条に記載があります。)結論は同じです。

シンプルに考えていただいて、離婚するということは一緒の生活共同体である意思を持たないわけですから、同じ名字を名乗る意思もあるわけはないですよね。

したがって離婚の場合は原則「復氏」ということになります。

とはいえ、女性の方が、離婚して名字が旧姓に戻ると、仕事上いろいろめんどくさい、支障がある、職場等にあまり知られたくない、子供との名字の問題が心配、などもろもろ問題点があることも事実でしょう。

そこで先程の民法第767条に第2項という項がありまして次のように書かれています。

(離婚による復氏等)
第767条
 第2項 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

「戸籍法の定めるところにより」とあるので、いっしょに戸籍法の条文も確認しちゃいましょう。

(離婚の際の氏を称する場合)
第77条の2
 民法第767条第2項の規定によつて離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

 (なお条文内の括弧書きは省略しました。)

ということで、三か月以内にこの民法第767条第2項の届出を出せば、婚姻中の名字をそのまま名乗ることもできるわけです。

これも届出だけですよ。

 

離婚と子供の氏・戸籍

さて先ほど途中でお話しましたが、離婚に際しての名字の問題と絡んで、お子さんの名字はどうなるのか、そして戸籍はどうなるのか、という点も注意を要するところかなと思います。

まず大前提として夫婦が離婚して例えば妻が名字を旧姓に戻したとしても、そのままではお子さんの名字に影響を与えません。

つまりこの場合はお子さんの名字は夫の名字のまま、というのが大前提になります。

さらに言えばこの状態ではお子さんは夫の戸籍に残ることになり、妻は元の戸籍つまり自分の両親の戸籍に戻るか、新しく自分が筆頭者の戸籍を作ることになります。

(なお妻が先ほどの民法第767条第2項の規定によって「旧姓」にもどらないで、婚姻の時の名字を名乗るのであれば、名字が違う以上両親の戸籍が残っていても戻ることはできず、新しい戸籍を作ることになります。)

ただこれでは嫌だ、という妻の方は多いですよね。

で、このケースにおいて次の条文があります。

民法第791条の第1項と第3項です。

(子の氏の変更)
第791条
 第1項 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
 第3項 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。

ということで、家庭裁判所の許可が必要になってくるわけです。

ただし、この条文には注意点があります。

というのも、「子が父又は母と氏を異にする場合」と条文の冒頭にありますから、妻が婚姻時の名字、つまり夫の名字を名乗るのであれば、条文にあるような家庭裁判所の許可は必要ないように一見思えます。

しかしその場合でも、先程お話ししたように子供を妻の戸籍に移すためには、結局この手続きを取る必要がでてくるということです。

この考え方がちょっとめんどくさいのですが、妻が離婚の際に婚姻時の名字を名乗ったとしても、法律の考え方はお子さんと別の名字という考え方になるというのです。

つまり妻が婚姻時に「上野」と名乗っていて、離婚後も「上野」を名乗るとしても、お子さんの「上野」とは呼び名も字面も一緒なのに❝違う名字❞として取り扱われることになる、というなんだかややこしい理屈です。

とすれば、お子さんの戸籍を、離婚した妻が自分の戸籍に連れていきたい場合はどちらの名字を名乗るとしても、この手続きは必要になってくるというわけなんですね。

ちなみにお子さんが15歳未満の時は、法定代理人つまり親権者などが子に代わって家庭裁判所の許可をもらうことができる、というのが第3項のお話しで、お子さんが小さい時はこれが通常でしょうね。

ただこれもまためんどくさい話なのですが、離婚し元の戸籍を出た妻が親権者であっても、それだけではやはりお子さんの戸籍は動かない、つまりお子さんは夫の戸籍に残ったままということになるわけです。

なんだかな、って感じですよね。

話を戻しますが、許可が下りれば、戸籍法第98条の規定による「入籍届」を裁判所の許可審判書謄本を添えて役所に提出することになります。

ここまできてはじめて妻と子が同じ戸籍に入ることになるわけです。

なおこの場合は仮に妻が両親の戸籍に戻っていたとしても、妻が筆頭者の戸籍が必要になってきまして、妻の両親の戸籍にお子さんと一緒に入ることは出来ません。

「三代戸籍の禁止」といって今の制度では親子二代までの戸籍しか作れないからですね。

ということで、少し長くなりましたが、今日は離婚や名字に関するお話しをまとめてみました。

 

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