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「死後離婚」と呼ばれる「姻族関係終了届」とは?

今日もテレビで見かけた話題からで恐縮ですが、先日2017年3月3日にNHKの朝の番組「おはよう日本」でいわゆる「死後離婚」が増えていることについて取り上げていました。

番組でもさくっとした説明はありましたが、今日はこの制度について私のほうでもちょっとだけ付け足しがてらお話ししたいと思います。

 

相手側の家族と縁を切るために

番組でも触れられていましたが、この「死後離婚」という言葉は正確な言葉ではありません。

というのも、普通に考えれば夫婦のどちらかが亡くなる、つまり「死別」であれば、基本的に婚姻解消になるわけです。

ですから離婚という手続きはありえないわけですよね。

ただ、「離婚」と「死別」の大きな違いとして、当事者間に「婚姻関係を終わらせる意思」があるかないかという点があります。

「離婚」は生きている夫婦同士の間で協議若しくは裁判によって「離婚」しますから、一般的に考えて離婚後も相手方の家族と身内として付き合っていく意思があるとは考えられないですよね。

ですから相手方の家族との付き合いも離婚によって終わることになります。

民法第728条第1項には次のように書かれています。

(離婚等による姻族関係の終了)
第728条
 第1項 姻族関係は、離婚によって終了する。

一方「死別」の場合は、夫婦の残された側が亡くなった側の家族とその後も付き合っていくのかどうかは夫婦の合意があるわけではないのでわかりません。

ですから残された側は、もし亡くなった側の家族とどうしても縁を切りたい、という場合には何らかの意思表示が必要になってくるわけです。

で、この意思表示をする届出のことを

姻族関係終了届

と言います。

これが最近俗に「死後離婚」と言われている制度です。

民法には次のように書かれています。

先程と同じ第728条の第2項です。

(離婚等による姻族関係の終了)
第728条
 第2項 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

文末の「前項と同様」というのは、姻族関係が終了をすることを示しています。

そしてこの条文にもとづいて戸籍法の第96条でこの届についての規定があります。

条文を確認しましょう。

(姻族関係終了届)

第96条  民法第728条第2項の規定によつて姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

 

「姻族」という言葉

さて先程途中まで「相手方の家族」という表現を使ってきました。

が、条文にもあるように、相手方の家族は正確には「姻族」という言葉になります。

で、この「姻族」は相手方、すなわち配偶者の血族や血族の配偶者を指します。

配偶者の血族は例えば妻から見て夫の親兄弟ということですし、血族の配偶者は例えば妻から見て夫の弟の妻、というような感じになります。

民法では「親族」のうち「姻族」については「三親等内の姻族」ということになっていますから、「姻族関係終了届」によってこの「三親等内の姻族」の方々とご縁を切るというイメージになります。

一応細かい話ですが、「三親等内」は妻から見て夫のおじおばグループや夫のおいめいグループぐらいまでと考えてください。

いとこは四親等になりますので、夫のいとこはそもそも対象者ではないことになります。

 

届出だけでいい制度

さてこの制度の特徴ですが、ポイントは次の2点です。

  • 届出人の本籍地または所在地の市区町村役所へ届を出す
  • 届出時期はいつでもよい

というところです。

先程戸籍法の条文に届に記載する事項の説明がありましたが、これらは実際には各役所に備え付けの用紙に記入の必要事項がありますし、それほど難しいことを書くことはありません。

届の用紙には「その他」という欄もあるようですが、特に記入の必要はないようです。

で、用紙に必要な事項を書いて届を出せばそれで終了になります。

その結果、届出した生存配偶者の戸籍の「身分事項」とよばれるところに「姻族関係終了に関する事項」が記載されることになります。(戸籍法施行規則第35条第7号に記載があります。)

つまり別にややこしい手続きが必要なわけではなく、届を出せばそれで済む制度であって、別に役所から相手方の姻族に通知が行くわけでもないわけです。

またこの届を提出できるのは死別した夫婦の生存している人だけです。

亡くなった配偶者の家族、つまり三親等内姻族の側からこの届は出せないんです。

妻から亡くなった夫の姻族に向けて、あるいは夫から亡くなった妻の姻族に向けて、という話になります。

 

扶養義務を免れるために

この届を提出することによって、何が起こるのでしょうか?

民法の第877条を見てみましょう。

(扶養義務者)
第877条
 第1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
 第2項 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

ポイントは第2項の「三親等内の親族間」です。

「親族」という言葉は民法第725条によって「六親等内の血族」「配偶者」「三親等内の姻族」という3つの関係者から成り立っています。

で、「姻族関係終了届」を提出することによってこの「三親等内の姻族」が「親族」から外れることになります。

とすると、仮に第1項に該当する親族がいないなどその他「特別の事情」があっても、死別した相手方の姻族の扶養義務を免れることになるわけです。

メリットと言っていいのかどうかわかりませんが、一応こういうことが起きることになります。

ただし注意していただきたいのは、自分にとっての配偶者の姻族は、自分の子にとっては血族であったりします。

例えば夫が亡くなったケースで、残された妻から見た夫の姻族の代表は健在であれば夫の両親、お舅さんお姑さんですよね。

でも夫の両親は自分の子から見れば祖父母でありこれは血族です。

つまり配偶者の姻族と自分の子供は縁が切れない関係であるということがあるわけです。

こういったことも含めて、その後の人間関係が大丈夫であるか否かよく考える必要が出てきます。

冒頭でご紹介した番組によればこの制度を利用している方が増えているそうです。

ある意味わざわざこの届を出すという選択をするのですから、提出者にはよほどの想いがあるのだろうという推測はできます。

ただお子さんたちにとっては先ほどのような亡くなった配偶者の両親が健在なケースでは後日相続手続きなどなんらかの関係は残るかも、ということも丁寧に考えて検討していただければ、と思っています。

 

 

 

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