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預金と遺産分割 その後

改正個人情報保護法についてお話しをしてきていますが、今日はちょっと一休み。

というのも、先日(2016年10月25日)預金と遺産分割というお話しをしましたがその中で「預貯金は遺産分割の対象ではなかったが、最高裁判所で弁論が開かれて判例が変更になるかもしれない」という趣旨のお話をさせていただきました。

先日その決定が出ましたので今日はそのお話しをしますね。

 

預貯金も遺産分割の対象

さる2016年12月19日最高裁判所は「預貯金も遺産分割の対象となる」旨に変更する決定を下しました。

すでに各新聞社やNHKのニュースサイトなどでも発信されていますのでみなさんもご存知のことと思います。

なお「決定」とお話ししましたが、この裁判そのものは原判決が破棄されて高等裁判所に差し戻されましたのでまだもう少し審理が続くことになるようです。

すでに裁判所のウェブサイトには本件の決定に関する全文が公開されていますが、まずは一応ポイントになるところをご紹介しますね。

なお興味のある方は裁判所ウェブサイトから最高裁判例集でご確認くださいませ。

で、ポイントですが次の一文が決定全文の中で特に下線の引かれている部分です。

共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。

(裁判所ウェブサイト内 平成28年12月19日最高裁大法廷 決定文より引用)

さらに先ほどお話しした私の2016年10月25日付「預金と遺産分割」のブログで取り上げた平成16年4月20日の最高裁判決についても次のように書かれていました。

最高裁平成15年(受)第670号同16年4月20日第三小法廷判決・裁判集民事214号13頁その他上記見解と異なる当裁判所の判例は,いずれも変更すべきである。

(裁判所ウェブサイト内 平成28年12月19日最高裁大法廷 決定文より引用)

ということですでに「預金と遺産分割」のブログでお話ししましたが、実際には分割協議書にも預貯金は記載されているのが通常ですから、今回の判例は実務に合わせる形で変更した、という感じになるかと思います。

この辺りも一部報道で伝えられているところですね。

さて今回の判例ですが理屈としてはどういうお話しになっているのでしょうか?

多少小難しいお話しですが、なるべくなるべくわかりやすくお話ししてみることにトライしてみます。

 

遺言や遺産分割協議の重要性

裁判所ウェブサイトで公表された今回の決定についての主文及び理由はA4で18枚(別紙込み)です。

中身を何度も読みましたが、この決定は預貯金債権というよりも預貯金が入っている口座をポイントにして、口座の契約上の地位を共同相続人全員が準共有しているというスタンスですね。

決定の理由の中で次のように書かれています。

預金者が死亡することにより,普通預金債権及び通常貯金債権は共同相続人全員に帰属するに至るところ,その帰属の態様について検討すると,上記各債権は,口座において管理されており,預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り,同一性を保持しながら常にその残高が変動し得るものとして存在し,各共同相続人に確定額の債権として分割されることはないと解される。そして,相続開始時における各共同相続人の法定相続分相当額を算定することはできるが,預貯金契約が終了していない以上,その額は観念的なものにすぎないというべきである。

(裁判所ウェブサイト内 平成28年12月19日最高裁大法廷 決定文より引用)

口座の中の預貯金は増えることもあれば減ることもあってゼロになることもあるわけですが、口座の名義人が亡くなった時に一応の残高による「法定相続分相当額」がいくらかはわかっても、口座の解約そのものは共同相続人全員で解約しないと口座が残る、という風な意味ですね。

さて気になるのはこの上の決定にある「預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り」という部分ですね。

すでに新聞などにも取り上げられていますが、遺産分割協議等で誰が口座を相続するのかきちんと調えないと口座内の預金を動かせない方向になっていく、つまり口座の相続について金融機関の対応がより厳格な方向に向かうのかなということを感じています。

もしくは被相続人の方が口座を誰に相続させるか遺言書で指定するようなことも今まで以上に重要になってくるでしょう。

一般社団法人全国銀行協会さんのウェブサイトに「預金相続の手続の流れ」というページがあります。

また同ウェブサイト内には「預金相続の手続に必要な書類」というページもあります。

特に「遺言書がある場合」と「遺産分割協議書がある場合」というところはこれから大事になってくることでしょう。

リンクを出しておきますので一度目を通していただくことをお勧めします。

一般社団法人全国銀行協会ウェブサイト内「預金相続の手続の流れ

一般社団法人全国銀行協会ウェブサイト内「預金相続の手続に必要な書類

現実的な事例として、もし金融機関が手続きを厳格化すれば、被相続人の葬儀費用や医療費などを被相続人の口座から充当することを考えている方は、一時的に相続人が金銭を負担せざるを得ないケースが出てくることも十分に考えられます。

被相続人の預貯金口座をどうするか協議がまとまらないとあるいは遺言書がないと相続手続きに時間がかかる可能性があるからですね。

相続人側もこのあたり一時的な資金の準備をあらかじめ考慮しておく必要性はありそうですので念のためということで。

 

 

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