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こんな自筆証書遺言は大丈夫?~その3~

前々回からこんな自筆証書遺言は大丈夫?、同じく~その2~というお話しをしてきました。

今回がこのシリーズの最後です。

前2回同様クイズ形式でお話ししていきますので気軽にお付き合いくださいませ。

さて一応今回も再度自筆証書遺言の要件4つを確認していただきます。

①全部自書、つまり手書き

②日付を入れる

③氏名を書く

④印を押す

さて今回は直接この4つの要件のどれか、というケースでなくその他いろいろと裁判になった事例をもとに考えていくことにいたしましょう。

 

手を添えてもらうことはありなのか?

では第6問です。

遺言者の方が病気などで体調を崩され手元に震えがあったりするなどして一人では字を書きにくい状況になっていたとします。

ただ近親者の方が手を添えてあげれば字を書くことができそうです。

この場合で、近親者の方が手を添えてあげて書いた遺言書があったとします。

これって大丈夫でしょうか?

ちょっと難しい問題ですね。

これは実は判断の難しいところがありまして、一定の条件を満たしたケースに限って「大丈夫」ということになります。

その条件を判例から見てみましょう。

自筆証書遺言につき他人の添え手による補助を受けた場合は、遺言者が自書能力を有し、遺言者が他人の支えを借りただけであり、かつ、他人の意思が介入した形跡がない場合に限り、自書の要件を充たすものとして有効である。

(最判昭62・10・8 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)

この判例の文中でまず「自書能力」という言葉に触れないといけませんかね。

というのも「字が書けなければ自書能力がない」と思う方もいらっしゃるかしれませんので。

裁判所ウェブサイトの裁判例情報にはこの判例について判決理由のPDFを読むことができます。

「自書」は遺言者が自筆で書くことを意味するから、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力を有することを前提とするものであり、右にいう自書能力とはこの意味における能力をいうものと解するのが相当である。したがつて、全く目の見えない者であつても、文字を知り、かつ、自筆で書くことができる場合には、仮に筆記について他人の補助を要するときでも、自書能力を有するというべきであり、逆に、目の見える者であつても、文字を知らない場合には、自書能力を有しないというべきである。

(最判昭62・10・8に関する裁判所ウェブサイトの裁判例情報にあるPDFの判決理由に関する記載から引用)

つまり極論的なことを言えばここでいう「自書能力」というのは書けることももちろん大事ですが、より文字を知っているかなどに重点が置かれていることがわかります。

ですから「他人の補助を要するときでも」とあるように助けてもらえば字を書くことができるというのあれば自書能力はあるような話になるわけですよね。

ただそうするともしかしたら添え手をしてくれた人が、遺言者の意思に介在してくる可能性は捨てきれないことになります。

そこで判例のような考え方できちんとして条件を充たすことが大事になります。

ただし、実務的に考えて実際にこのようなケースではやはり公正証書遺言を利用するようにしてください。

あとあとに紛糾する可能性を考えれば、やはりしかるべき形で遺言書を残しておくことが重要ですのでね。

では次が最後の問題です。

 

割印って必要?

最終第7問です。

ある方が自筆証書遺言を書いていたら内容がいっぱいになってしまって紙が1枚では書ききれず2枚にわたってしまいました。

で、この2枚の間に割印は押されていません。

これって大丈夫でしょうか?

バラバラになったら大変な気がしますが果たして・・・。

では答えです。

「大丈夫」なんですね。

では判例を確認しましょう。

自筆遺言書は数葉にわたるときでも一通の遺言書として作成されているときは、その日付・署名・捺印は一葉にされるをもって足りる。

(最判昭36・6・22 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)

文中の「数葉」とか「一葉」とかいう言葉、最近は聞かないと思いますが、ハガキなどの数え方としてあるようですね。

「数枚」とか「一枚」とかだと思っていただいてけっこうです。

そういえば「ハガキ」は「葉書」ですもんね。

で、これは全部に印鑑を押したりしなくても同じ字で文章が続いているのがわかりますから、別に割印とかはなくてもいいという話になります。

でも先ほどもいいましたように、バラバラになったらどうするかね・・・という心配はあります。

一般的に数枚になってしまった場合は通常封筒に入れることになろうかと思います。

「思います」と今お話ししましたが、みなさん遺言書って封筒に入れるものだと勝手におもっていませんか?

実は自筆証書遺言に関しては封筒に入れるという決まりはありません。

自筆証書遺言は後で「検認」といって家庭裁判所でどんな遺言書が作成されたかその内容を確定する手続きが必要になります。

これはその遺言書が有効か無効かを確認する作業ではないので誤解のないようにお願いしたいのですが、この「検認」の際にもし封筒に入って封印がされている遺言書の場合は家庭裁判所で相続人等の立会いがないと開封できない決まりになっています。(民法第1004条第3項に書いてあります。)

で、これはあくまで「封印のある遺言書」のケースでして、実際に冒頭の自筆証書遺言の4つの要件を見ても封筒に入れることという記載はないので、一応参考までに。

とはいえ現実に数枚になってしまった場合はやはり封筒に入れて保管しておくべきでしょうね。

中身が見えてしまうのもあんまりいいものではないし、改ざんの可能性も出てきますのでね。

ということで3回にわたって自筆証書遺言についてクイズ形式でお話ししました。

参考にしていただければ幸いですし、また不明な点などありましたらご相談くださいね。

 

 

 

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