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こんな自筆証書遺言は大丈夫?~その2~

前回こんな自筆証書遺言は大丈夫?というお話しをしました。

今回はその続きです。

前回同様クイズ形式でお話ししていきますので気軽にお付き合いいただければと思います。

ちなみにこの「クイズ形式」は、私が遺言について何度か人前でお話しさせていただく機会がありまして、その時に必ず参加者のみなさんに「どっちだと思いますか?」みたいな感じで問いかけて考えていただくようにしていることが元ネタです(笑)

講師が口でお話ししていたものを文章している感じですね、ハイ。

さて一応今回も再度自筆証書遺言の要件4つを確認してからクイズのほうにまいりましょう。

①全部自書、つまり手書き

②日付を入れる

③氏名を書く

④印を押す

で、今回は③からですね。

 

氏名について

では、第3問です。

ある作家さんが自筆証書遺言を書くことにしました。

中身をきちんと書いて最後の氏名を書くにあたって作家名を書きました。

本名は違うのですが、作家名でも自分のものとわかると判断したのです。

さてこれって大丈夫でしょうか?

実はこれは以前「自筆証書遺言の要件はなかなかに厳しい」というお話しの際にさらっと触れています。

で、答えは「大丈夫」です。

早速判例を見てみましょう。

本条にいう氏名の自書とは遺言者が何人であるかにつき疑いのない程度の表示があれば足り、必ずしも氏名を併記する必要はない。

(大判大4・7.3 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)

これ「大4」とあるのは大正4年の判例という意味ですからずいぶん前の判例ですね。

それと文中の「遺言者が何人であるかにつき」の「何人」は「なんびと」もしくは「なんぴと」とお読みいただいたほうがいいですね。

「なんにん」だと人数になってしまいますもので。

で、本題ですが、まあ判例に書いてある通りでして、誰だかわかればいいという話になるわけです。

ただ、誰だかわからない名前を使って書いてあとで「これ本人が書いたの?」って話になってもこまるわけですから、我々は普通に氏名を書くことになるわけですね。

では次にいきましょう。

 

印鑑の押し方

第4問です。

ある方が自筆証書遺言を書いていたのですが、たまたま近くに印鑑が見当たりませんでした。

せっかくここまで書いたからと自分の親指を朱肉につけて押す、いわゆる「拇印」で押したとします。

これって大丈夫でしょうか?

考えましたか?

では答えです。

「大丈夫」です。

判例はごく簡単に次のようになっています。

自筆証書遺言における押印、指印をもって足りる。

(最判平1・2.16 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)

「指印」は裁判所ウェブサイトにある本件の裁判例情報を詳しく読むと「拇指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)」と記載されています。

そもそも民法第968条1項には「これに印を押さなければならない」と書いてあるだけで、その「印」がどんなものであるかはについての決まりや制限はないわけです。

ですから「実印」はもちろん「認印」でもいいし、判例にいう「指印」でも大丈夫ということになります。

ただ個人的には印鑑は実印のほうがいいのではないかな?と考えています。

自筆証書遺言の場合、のちのち遺言書の真偽をめぐって相続人どうしなどで争いになってしまうことがあるのはご存知のとおりです。

で、基本的には実印は本人しかもっていないもののはずです。

そう考えれば少しでも間違いないものとあとあと思ってもらえるために、例えば自筆証書遺言に実印をついて書いた日の印鑑証明書を一緒にしておくなんていう方法を考えておくのが一案かなと思います。

別に法律的な要件でもなんでもありませんが、少しでも信ぴょう性を高めるのにはいいのではないでしょうかね。

さて印鑑についてはいろいろとポイントになる判例があります。

それだけ印鑑についてはいろいろと争いになる要素があるっていうことなんですけどね。

なので次も印鑑についての問題です。

第5問!

封書のお手紙を書くようなつもりで遺言書の本文を書き終わり丁寧なことに封筒に入れて糊付けをしました。

が、本文の名前の下には印鑑を押しませんでした。

お手紙のような形だったからでしょうけど、遺言書を書いているわけですから印鑑はないといけないわけで、この方は封筒の封じ目に印鑑を押しました。

これって大丈夫でしょうか?

さっ、みなさん考えましたか?

では答えです。

これはなんと「大丈夫」なんですね。

本文の名前の下に印鑑がないとなんとなくダメなように思うかもしれませんが次のような判例があります。

遺言書本文を入れた封筒の封じ目にされた押印をもって、本条一項の押印の要件に欠けるところはない。

(最判平6・6.24 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)

ちょっとこれだけでは短くまとまりすぎているかと思いますので、この判例の裁判要旨を裁判所ウェブサイトから引用させていただきましょう。

遺言者が、自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため、遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが、遺言書であることを意識して、これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなど原判示の事実関係の下においては、右押印により、自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはない。

(最判平6・6.24の裁判要旨を裁判所ウェブサイト裁判例情報より引用)

ここまで細かい説明が出てくるとわかりやすいかな、と思います。

言葉づかいは若干かたいのですが、大丈夫な理由づけになっていると思います。

さてこのクイズ形式ですが、もちょっと続きがありますので、次回もう一回お話ししますね。

 

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