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こんな自筆証書遺言は大丈夫?

さて久しぶりに遺言書のお話をしたいと思います。

特に今日は自筆証書遺言についてのお話です。

結構気軽な感じでお付き合いいただけるように進めていきますので、よろしければ最後までよろしくお願いしますね。

 

自筆証書遺言の要件を確認してみる

以前に自筆証書遺言の要件はなかなかに厳しいというお話をしました。

その際に自筆証書遺言の要件をまとめています。

リンク先をみていただけるとありがたいのですが、ここでも簡単にまとめてみましょう。

まず条文の確認です。

(自筆証書遺言)

民法第968条

第1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

これが要件です。

まとめると次の4つになります。

①全部自書、つまり手書き

②日付を入れる

③氏名を書く

④印を押す

要件としては以上になります。

ただ要件が少ないということは、逆に言えば「こういうケースは?」とか「ああいうケースは?」なんて判断に迷うことがでてきます。

そこで裁判に持ち込まれたものが「判例」という形でのこっていくわけですね。

ということで、ここからはその「判例」をベースに考えていくことにしましょう。

 

カーボン紙を使った場合

では、さっそくにクイズ形式にて(笑)

読みながら一緒に考えていってくださるとなお参考になると思いますので。

まず第1問。

①の要件で遺言書は全部自書とお話ししました。

それではあとで誰かに手を加えられないようにと考え、いわゆるカーボン紙を使って複写になる形で遺言書を書いたとします。

カーボン紙を使ったことがある方であればお分かりかと思いますが、鉛筆やボールペンなどと違ってインクの雰囲気が違うんですよね。

ただこのケースは紙に自分で直接書いたわけではありません。

これって大丈夫でしょうか?

お考えいただきましたか?

では正解です。

判例を見てみましょう。

遺言の全文、日付および氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載することも、自書の方法として許されないものものではない。

最判平6・6.24 最判平5・10・19 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)(訂正 当初記載した判例の日付に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。)

ということで正解は「大丈夫」ということですね。

このケースでも自分の字で書いていることには変わりないですもんね。

ちなみに「自筆」という点でいうと、筆記用具については特に制限があるわけではありません。

ですから極端な話、鉛筆でも要件としてはOKなんですね。

ただまあ実際に鉛筆で書くと改ざんされてしまう危険性はあるわけで、やっぱりボールペン等を使ってほしいところです。

とはいえ最近はフリクションペンなどのいわゆる「消えるペン」と呼ばれるものもありますので注意が必要です。

なおこのブログは2016年11月28日現在のものです。

以前に「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」のパブコメ結果が発表されましたの中でも触れましたが、自筆の要件は一部改正が検討されています。

今後の動向にも注意していく必要がありますね。

 

日付の記載

次に第2問、今度は②の日付に関する問題です。

まず大前提として日付の入っていない自筆証書遺言は無効ですのでそこを忘れないようにして考えてくださいね。

では、書いた日付を「平成28年11月吉日」と書き記しました。

これって大丈夫でしょうか?

これは結構知られているので簡単かもしれません。

答えは「大丈夫ではない」です。

判例にしっかりと残っています。

自筆遺言証書の日付として「昭和41年7月吉日」と記載された証書は、本条1項にいう日付の記載を欠くものとして無効である。

(最判昭54・5.31 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)

判例にいう「吉日」って、「結局いつ?」っていうお話しになってしまいます。

日付の特定ができないわけですから、これでは大丈夫なはずがないですよね。

さて、ということは日付の特定ができればいいわけですから、例えば「遺言者の60歳の誕生日」とか、以前聞いた例えでは「長野冬季オリンピックの開催日」とかそういうケースでは一応特定ができるということになりそうだ、といわれています。

また先程もお話ししたように日付のない遺言書は「無効」になってしまいますが、もし日付を間違えた場合はすぐにすぐ無効になるわけではありません。

これも判例で残っています。

自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であることおよび真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。

(最判昭52・11.21 なお三省堂「平成28年模範六法」の記載を引用)

まあでもこの遺言者が書いた日付に誤りがあることを相続人等がわかるケースって、そんなにたくさんあるのかな?って疑問にはなりますけどね。

ところで先程の2件の判例ですが冒頭の記載が「自筆証書遺言」ではなく「自筆遺言証書」と書いてありますが、これは間違いではありませんので念のため。

ちなみに裁判所HPの「裁判例情報」でも上記2つの判例の「裁判判旨」には「自筆遺言証書」と書かれています。

何か理由があるのでしょうけど、そこは今回はクイズ形式なので(笑)深く考えないこととしましょう。

さて2問で思いのほか長くなってしまったので、このお話しは次回に続きをお話しすることにしますね。

 

 

 

 

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