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預金と遺産分割(追記あり)

先日相続に関する民法の改正試案についての意見集約についてお話しをさせていただきました。

「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」のパブコメ結果が発表されましたという記事も、若干小難しい内容ですがあわせてお読みいただけると幸いです。)

その際に一つ別にお話しすることにしていたのが、可分債権と遺産分割に関するお話しです。

で、今日はこの可分債権と遺産分割についてのお話しをさせていただきますが、この「可分債権」はまず多くの方にとってなじみがない言葉だと思います。

シンプルに言えば「預貯金」がその最たるものなのです。

では、この預貯金と遺産分割ってそもそも何か問題のある話なのでしょうか?

今日はそのあたりからお話しをしていきますね。

 

預貯金は遺産分割協議の対象にならない?

先日、2016年10月20日(木)の日本経済新聞朝刊に次のような見出しの記事がありました。

「預金も遺産分割対象に 最高裁、判例見直しへ」

この見出しを見て「えっ?」と思った方は多いのではないでしょうか。

「預金って遺産分割の対象じゃないの?」

これが多くの方のストレートなご意見かと思います。

実際問題、実務としては遺産分割協議で預貯金の分割方法を協議することがごく普通なわけで、「預貯金が遺産分割できない」なんて考える方のほうが少ないでしょう。

しかしどういうわけか裁判所の判例には次のようなものがあります。

相続財産中の可分債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。

(最判昭29年4月8日)

もう一つ先ほどの日経新聞の記事でも触れられていた2004年の最高裁判決なるものもご紹介します、ちょっと長いですけど・・・。

相続財産中に可分債権があるときは、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され各相続人の分割単独債権となるから、共同相続人の一人が、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の権利を行使した場合には、その侵害を受けた共同相続人はその侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償または不当利得の返還を求めることができる。

(最判平16年4月20日)

って、あ~長い・・・。

さてこの二つに出てきた「可分債権」って言葉です。

「債権」というものはそもそも誰かが誰かに対して「○○をしてね」と請求できる権利です。

逆にこの債権にもとづいた義務が「債務」と言われるものです。

で、預金者は銀行に自分のお金を預けています。

定期とかそういう話をひとまず置いておいて普通預金であれば基本的にはいつでも銀行に預けているお金を支払うように言えますよね。

(つうか、実質はATMで引き下ろし、だと思いますが。)

逆に金融機関はこの場合預金者にお金を支払う債務を負っているわけです。

ですからまず、預金というものは預金者からすれば「預金債権」というのがもうちょっと正確な言い回しになります。

さてこの「預金債権」は通常一人の預金者が持っている、というか普通自分の預金は自分の預金口座に積むわけですから、人と共有するものではないですよね。

ところが相続が発生するとこの原則が崩れる事態が起こります。

そうです、相続人が複数いれば相続発生とともに共同相続人みんなのものになるわけです。

債権を何人かで持っている場合、民法には一つの原則があります。

民法427条です。

民法第427条

数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者はそれぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

この条文では「等しい割合」とありますが、相続のケースでは、この条文を使いながらいわゆる法定相続分で分ける形が、可分債権についての判例となっているのです。

他にこの「可分債権」の例としては被相続人がアパート経営をしていた場合の賃料を賃借人さんからもらう権利=賃料債権が挙げられます。

賃料債権については、相続開始から遺産分割までの間に発生したものは遺産分割の対象としないで、各相続人が相続分に応じて分割単独債権を取得する、つまり遺産分割までの間は自分の相続分にあたる賃料を賃借人からもらう権利がある、という趣旨の判例があります。(最判平17年9月8日参照)

 

実態に合わない

とまあ長々理屈っぽい話をしてまいりましたが、これが現実的な話にそぐわないのはみなさんもお気づきのことと思います。

先日2016年10月19日、最高裁判所はこの件について弁論を開きました。

最高裁判所が弁論を開く場合は、判例が変わる可能性が高いとよく言われていて、今回もどういう判決になるのかしっかり見ないといけないところです。

また冒頭に触れましたが、民法改正試案では遺産分割に関する見直しの中で、可分債権を遺産分割の対象に含めるかどうかパブリックコメントによる意見集約を求めたところ、遺産分割対象に含めることについての賛成意見が大勢を占めたようです。

ただしこれはちょっと専門的なお話しになるのですが、遺産分割対象になる可分債権を預貯金だけでなく貸金債権などにも含むのかどうかや遺産分割までの権利行使を認めるかどうか、といった点については意見が分かれているようで、どのような形で見直しされるのかはもうちょっと時間がかかりそうです。

以前遺産分割をなるべくわかりやすく話してみる~番外編~でもお話ししましたが、最近親族や相続に関する民法の規定は様々な見直しが増えてきています。

引き続きこのブログでも情報発信していきますが、ここにきての様々な見直しはやはり世の中の変化で実態にそぐわない規定が結構増えていることをあらためて感じされるところです。

(追記)

2016年12月19日最高裁判所は「預貯金も遺産分割の対象となる」旨に変更する決定を下しました。

これについて「預金と遺産分割 その後」というお話しを新たにアップしましたので、そちらもあわせてお読みくだされば幸いです。

 

 

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